2013年5月4日土曜日

医療機関における産業保健活動の実態調査




 本調査は医療機関での産業保健活動の実態を明らかにすることを目的に行われました。対象は
公益財団法人日本医療機能評価機構の病院機能評価の認定病院のリストを元に関東地方の医療機関のすべて(n=553)を対象としました。回答があったのは166病院でした(回答率:30%)。調査は20131月に行われました。日本産業衛生学会の医療従事者のための産業保健研究会の助成により行われました。

・回答の病院の病床数では、300床未満(59%)300-499(25%)でした。99%の病院が産業医を選任していました。
・産業医の役職は、院長や理事長(25%)、副院長(16%)、部長(30%)、医長(14%)でした。
・衛生管理者の選任は91%の病院で行われており、看護師、薬剤師、事務職など幅広く選任されていました。
・衛生委員会の開催は93%の病院で定期的に開催され、毎月開催されていたのは80%の病院でした。
・産業医による定期的な職場巡視は67%の病院で行われ、毎月行われていたのは42%の病院でした。
・入職時に医師や看護師のB型肝炎、C型肝炎などの血液媒介感染症の抗原・抗体検査を行っていた病院は93%で、B型肝炎の抗体が陰性の職員へのワクチン接種が行われていたのは92%で、ワクチン接種の費用が全額病院負担であったのは76%でした。
・入職時に医師や看護師の風疹、麻疹、水痘の抗体検査や既往調査を行っていたのは58%でした。
麻疹、風疹、水痘の抗体が陰性であった場合に医療従事者に対してワクチン接種を行っていたのは50%でした。また、行っていると回答した病院のうち費用が全額病院負担であったのは37%でした。
・季節性インフルエンザワクチンはすべての医療機関で実施されていましたが、費用が全額病院負担は45%でした。
・入職時に医師や看護師に結核対策としてベースラインをQFT検査(27%)、ツ反(45%)で把握していました。
・結核患者等の空気感染する感染患者に対応する医療従事者に対して、N95マスクのフィットテストを行う機会をこの1年の間に1度以上提供していたのは41%でした。
・メンタルヘルスの事例(うつ病で休職など)があった際に、職員本人や上司が産業医に相談できる体制があるのは93%でした。外部のEAP(従業員支援プログラム:メンタルヘルスなどの相談ができる)と契約しているのは29%でした。
・メンタルヘルス教育としてセルフケア向け46%、管理者向け36%がこの1年の間に1度以上行っていました。
・職員が病気のためある一定期間の休職後、復職を希望する場合、産業医面談を行っているのは54%でした。

・医療機関での産業保健対策として優先順位は以下の順位で高かったです。(1が優先度が高い)
1.職業感染対策(針刺し事故予防やワクチン接種)
2.呼吸器感染(結核・インフルエンザなど)対策
3.医療従事者自身の健康管理(健康診断の受診、生活習慣の改善など)の推進
4.医療従事者のメンタルヘルス対策
5.疲労(過重労働)・交代勤務による健康障害予防対策
6.患者からの暴言・暴力対策
7.放射線被爆低減対策
8.化学物質の管理(エチレンオキサイドガス、ホルムアルデヒドなど)
9.医療従事者間でのハラスメント対策
10.  腰痛などの作業関連の筋骨格系障害対策