2016年4月7日木曜日

40代からの健康管理2.0~次の約40年を 自分らしく生き抜くために~ 第1回なぜ健康管理2.0が必要なのか?

「安全と健康」2016年4月に掲載されています

40代からの健康管理2.0~次の約40年を 自分らしく生き抜くために~

国立研究開発法人国立国際医療研究センター
医師 和田 耕治

第1回
 なぜ健康管理2.0が必要なのか?


連載にあたって
 皆さんは、自分が何歳まで生きると思いますか。80歳ですか? 90歳ですか? 100歳ですか?
 皆さんは、「早く死んだら困る」と思って生命保険に入っていますか? それとも、「長く生きたらどうしよう」と思って老後資金をいくら貯めたらいいのか心配していますか?
 確率的には、「長く生きる」ことを想定する必要があります。長く生きれば、体と心には加齢の影響はもちろんでますし、さらに自分を取り巻くさまざまな環境の変化と戦わなければなりません。
これから9回の連載予定で、私と同年代である40代の皆さんに、「健康管理2.0」として次の約40年を自分らしく生き抜くための「新しい健康管理」を紹介します。もちろん、これから40代を迎える人には予習として、また、すでに40代を過ぎた人にも今の自分の状況と重ね合わせてもらうために、ぜひ読んでいただきたいと思っています。
健康管理2.0のように、最近は従来のものを「〇〇1.0」とした場合に、連続しながらもグレードアップしたり、質が異なったりするものを「○○2.0」と呼ぶことがよくあります。
この連載では、健康管理2.0として少し違った取り組みを紹介していきます。食事に気をつけましょう、タバコをやめましょうなどという話はいまさら取り上げません。
この連載は正直なところ、万人に好かれる内容のものではないでしょう。なぜなら、できれば目を背けたい事実も多いので…。しかし、世にあまたある雑誌の中から「安全と健康」という雑誌を手に取り、私の執筆したものにまで目が届くような、健康意識の極めて高いという少数派の「あなた」には、きっと納得をいただけると信じています。
 では、早速本題に入っていくことにしよう。

日本人の寿命は確実に延びている
 これからの約40年、日本社会の将来の見通しにはっきり言って明るい話などあまりない。私だって、これからの約40年間に起ころうとしている高齢化や社会保障費の増大はできれば他人事であって、自分だけは大丈夫だと思いたいぐらいである。しかし、そんななかでもわれわれ日本人の寿命は着実に延びている。
 65歳時の平均余命というものがある。これは65歳の時点で、その後平均でどのくらい生きるかという指標である。2010年には男性で19年、女性で24年だった。2060年には男性で22年、女性で28年と、今から約50年後にはさらに伸びると予測されている。今の時点で、65歳の男性は84歳、女性では89歳までは平均的に生きると思ったほうがよいだろう。だったら、私たち40代はそれよりももう少し平均余命が長くなりそうである。
 団塊の世代である自分の母に、「あなたたちの年齢の女性は、100歳まで生きることを想定したプランが必要だ」と言うと、「そんな100歳まで生きるなんて。はっ、はっ、はっ」なんていう返事が返ってくる。しかし現実には、その母は義理の母(私の祖母)を106歳まで介護したのに、である。
表は、2014年の日本人の生命表をもとに、それぞれの年齢まで生存する者の割合を示したものである。比較のために、1975年、1990年も掲載する。今や男性でも4人に1人が90歳まで生き、女性は2人に1人が90歳まで生きる時代である。この事実は、我々にとって大事なポイントである。
改めてお聞きします。あなたは自分が何歳まで生きると思いますか?もしくは、生かされると思いますか?この事実によって皆さんのライフプランにおける認識も変わってきたのではないでしょうか?

健康寿命も認識する
 健康寿命とは、日常生活に制限がない状態で日常生活を送れる期間である。2013年のデータでは男性の平均寿命が80歳であるのに対して健康寿命は71歳、女性の平均寿命が87歳であるのに対して健康寿命は74歳だった。平均寿命と健康寿命の差は男性で9年、女性で12年である。
 日常生活に制限がでる原因としては、加齢、病気、そして環境面の変化が影響する。健康寿命をいかに伸ばすかが、個人のライフにとっても、医療介護に関わる費用を増やさないという意味で国にとっても重要である。当然、健康寿命を延ばすためには、体を適度に動かしたり、食事を取り過ぎないようにしたり、ストレスをためないようにしたり、することが重要であることは間違いない。
 健康管理2.0では、自分の寿命の可能性、そして健康寿命を伸ばすことも、40代から
きちんと認識することを薦める。
次回は、そうは言っても若く死ぬ可能性が心配な方にその可能性について詳しく解説する。

1. 特定の年齢まで生存する者の割合(%)
 
男性
女性
 
40
65
75
90
95
40
65
75
90
95
2014
98
88
74
24
9
99
94
87
48
24
1990
97
83
63
12
3
98
91
80
26
9
1975
95
77
51
5
1
97
86
68
12
3

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life14/dl/life14-15.pdfより作成

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